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テクニカルガイド

ECサイトの決済方法は何が必要?|最新データで導入戦略・選び方を解説

テクニカルガイド

ECサイト運営において、決済方法の選択は売上に直結する重要な判断です。
「どの決済手段を導入すれば良いのか?」「コストと効果のバランスは?」といった悩みを抱える事業者の方も多いでしょう。

決済方法の選択は、単なるコスト比較ではなく、売上機会の確保に直結する重要な戦略判断です。
本記事では、最新の利用率データに基づいて、ECサイトの決済方法導入戦略を具体的に解説いたします。

この記事でわかること
  • 最新データに基づく決済方法の利用率と市場動向
  • 年代別・購入金額別・地域別の決済選好パターン
  • 業種・商材特性に応じた効果的な決済戦略
  • 必須・推奨・選択レベルでの導入優先順位
  • 月額固定費vs変動費の適切な判断基準
  • 段階的導入の具体的なスケジュールとアプローチ
  • 導入時の注意点と運用上のトラブル対策
  • 将来の決済トレンドと継続的最適化の方法

ECサイト決済方法の利用率分析【2025年最新データ】

まず、現在のEC利用者がどの決済方法を選んでいるかを正確に把握することが重要です。
各社のECサイト利用率に関する調査データから、自社ECサイトで活用できる決済手段を中心に見やすくまとめた表をご覧ください。

以下の表には、自社ECサイトでは利用が難しいモール(楽天、Amazon、Yahoo!)で人気の決済方法も含まれていますが、あくまで自社で決済方法を導入する際の傾向分析に役立てるものとしてご活用ください。
たとえば、aiship利用決済傾向でAmazon Payが高いのは、このECサイト構築サービスの特徴であり、すべてのECサイトに当てはまるわけではありません。
しかし、全体的にどのような決済がユーザーに好まれているかを把握するための重要な材料となります。

決済方法 利用率A(複数回答)
※決済手段利用実態調査
利用率B(複数回答)
※通信利用動向調査
利用率C
※aiship利用決済傾向
注記
クレジットカード決済 59.4% 76.7% 57.1% まず導入すべき基盤
PayPay 32.0% -(ID決済合算 38.5%) 6.5% 実店舗連携で高く見えやすい
Amazon Pay 5.5% -(ID決済合算 38.5%) 13.6% 住所・支払情報の即時呼び出し
楽天ペイ(オンライン決済) 13.3% -(ID決済合算 38.5%) 0.4% モール要因で高く見えやすい
コンビニ決済 9.9% 34.7% 0.6% 未払い・タイムラグに注意
後払い決済(BNPL) 5.9% 6.2% 初回購入の心理的ハードル低減
代金引換 5.3% 17.8% 6.1% 高齢層・現金派で根強い
銀行振込(事前振込) 6.1% 23.0% 2.7% 入金確認の運用コスト
ネットバンキング決済(Pay-easy等) 3.5% 21.9% 収納代行で自動消込可
キャリア決済 5.4% 16.2% 1.2% デジタル商材で相性良

※複数回答の調査では合計が100%を超えます。個別内訳のない項目は「-」表記。
※SBペイメントサービス「ECでの決済手段に関する調査 2025」、総務省「令和5年 通信利用動向調査報告書(世帯編)」、aiship「aishipで構築されたECサイトでの利用決済傾向」を参考。

クレジットカード決済:依然として圧倒的な優位性

EC決済におけるクレジットカードの利用率は約6割弱と圧倒的で、「まず導入すべき」決済手段として位置づけられています。
実際の利用率は約59.4%と半数以上を占め、EC利用者の約76.7%がクレジットカード決済を利用した経験があることが最新調査から分かっています。

さらに、最もよく使う決済方法として52.2%以上のユーザーがクレジットカードを選択しており、その強さは依然健在です。

クレジットカード決済の特徴

年代が上がるほどカード支払い志向が強くなる傾向があります。
高額商品の分割払いやポイント還元など、カード独自のメリットが支持される理由です。

ただし、近年は若年層を中心に「カード以外の手段で済ませたい」ニーズも増加しており、利用率は緩やかに減少傾向にあります。

新興決済手段の台頭:PayPay・Amazon Pay・楽天ペイの急成長

注目すべきは、PayPay・Amazon Pay・楽天ペイ等のID決済・スマホ決済の急激な普及です。
楽天ペイ(オンライン決済)は2025年時点で約13.3%の利用率となっており、ID決済の中でも重要な選択肢となっています。

また、PayPayは若年層を中心に支持され、特に10代女性では利用率が37.0%とクレジットカード(24.7%)を上回る高い普及率を記録しています。
Amazon Payも約10~14%の利用率でID決済として着実に普及が進んでいます。

後払い決済(BNPL):成長著しい新たな選択肢

Buy Now Pay Later(後払い/BNPL)決済は急速に普及しており、経産省資料によれば市場規模は2020年度8,820億円から2024年度1.8兆円超へと倍増予測となっています。
物販EC全体での利用割合は6~7%程度ですが、利用経験者は約25.8%に上り、特に若年層と高齢層で需要が高いのが特徴です。

後払い決済導入時の注意点

業種による差が大きい:ファッション・コスメ系ECでは後払いの導入率・利用率が特に高く、一部のサイトでは利用率が9割超に達する事例もあります。

年代別ニーズ:20代以下では「手持ちが足りない時の便利さ」から、60代以上では「支払い時の安心感」から支持されています。

年代別決済方法選好の詳細分析

ECサイトの決済方法選択では、ターゲット層の年代特性を理解することが極めて重要です。
各年代の決済方法選好を詳しく分析し、効果的な導入戦略を検討しましょう。

10代:スマホ決済が主流、クレジットカードを上回る利用率

10代のユーザーは、クレジットカード保有率が低いため、スマホ決済が最も支持されています。
特に10代女性ではPayPay(オンライン決済)の利用率が37.0%でトップとなり、クレジットカード(24.7%)を上回りました。

10代男性でもPayPay利用率は31.0%と高く、クレジットカードは約38%に留まります。

10代向けECサイトの決済戦略

コンビニ決済も10代女性で13.7%と3番目に選ばれており、クレジットカードを持たない層はスマホ決済や現金前払いを積極利用しています。
代引きはほとんど利用されないため、10代をターゲットとするECサイトでは、PayPay等のスマホ決済とコンビニ決済の優先導入を検討すべきでしょう。

20代:多様な決済手段を併用、後払いへの関心も高い

20代はクレジットカード利用が増える一方で、他世代より多様な決済手段を併用する傾向があります。
主要手段はクレジットカード(利用率約40~43%)ですが、スマホ決済(PayPay等)も約15%と引き続き高い水準です。

注目すべきは後払い決済への関心の高さで、初めて利用するECサイトでは後払い利用率が15.7%と代引きを上回っています。
クレジットカード払いに不安がある場合やサイトの信頼性が不明な場合、20代は代引きより後払いを選ぶ傾向が出ています。

30代・40代:クレジットカード中心、メイン購買層

30代・40代はネット通販のメイン購買層で、クレジットカード決済が圧倒的主流です。
30代でクレジットカード利用率は5~6割、40代では6~7割に達し、他の決済手段の割合は若年層より減少します。

PayPayや楽天ペイなどID系・スマホ決済も一部に利用されていますが(各世代10%前後)、「まずクレジットカード」という傾向が最も強い世代です。

50代・60代以上:カード決済主体、後払いニーズも存在

50代・60代以上はクレジットカード保有率が最も高い世代で、ネット通販でもカード決済が75~86%と多数派です。
一方で興味深いのは、「商品を確認してから支払いたい」「カード情報流出が不安」といった理由から後払い決済を選ぶ割合が全世代で最も高い点です。

実際、60代以上でも後払い利用経験率は約39%と4割近くにのぼり、安心感を重視する層に支持されています。

購入金額別・地域別の決済傾向

購入金額による決済手段の使い分け

購入金額によっても、選択される決済手段に明確な傾向があります。
効果的な決済戦略を立てるため、金額帯別の利用パターンを把握しておきましょう。

少額決済(~1,000円未満)

携帯キャリア決済や電子マネー・ポイント払いが選ばれることが多く、クレジットカード情報を入力する手間を省く傾向があります。
後払い決済や代引きは手数料の割合が相対的に大きくなるため敬遠されます。

中額商品(1,000~5,000円)

クレジットカード決済が主軸ですが、後払いニーズも現れ始めます。
実際、後払い決済の利用意向が最も高い価格帯は1,000~10,000円未満との調査結果があります。

一般的通販価格(5,000~20,000円)

最もクレジットカード決済比率が高い金額帯です。
後払い決済の利用も5千~1万円未満でピークとなり、各年代ともこのレンジで後払いを利用する割合が高くなります。

高額商品(20,000円以上)

信用力のある決済手段が好まれ、基本的にはクレジットカード払いが圧倒的です。
ただし若年層(Z世代)では「今すぐ欲しいが手元に十分なお金がない」という理由で後払いで高額商品を購入する例も多く見られます。

地域別の決済傾向

インターネット上の買い物でも、居住地域によって決済手段の選好に一定の違いが見られます。
地域性を考慮した決済戦略も重要な検討要素となります。

都市部(大都市圏)

キャッシュレス化が進んでおり、東京都内ではEC決済の約60%がキャッシュレス決済です。
クレジットカードやPayPayなどオンライン決済が主流で、決済手段の選択肢も豊富な環境が整っています。

地方(郊外・中山間地域)

高齢者比率が高いこともあり、コンビニ払いや後払いといった現金ベースの決済ニーズが都市部より根強く残っています。
実際、地方通販では商品代金を郵便振替や代引きで支払う文化が一部に残存し、高齢層の利用者が多い地域ほどカード以外の選択肢を求める声があります。

業種・商材別の導入戦略

決済方法選択では、扱う商材とターゲット層の特性を理解することが極めて重要です。
業種ごとの特徴を踏まえ、効果的な決済手段の組み合わせを検討しましょう。

ファッション・アパレル系EC

クレジットカード、後払い決済、PayPay

「試着してから支払いたい」ニーズが強く、後払い決済の導入効果が特に高い業種です。
若年女性がターゲットの場合、PayPayの利用率が高いため優先導入を推奨します。

コスメ・美容系EC

クレジットカード、後払い決済、Amazon Pay

肌に直接使用する商品のため「使用後に支払いたい」心理が働きやすく、後払い決済の需要が高い傾向があります。

食品・グルメ系EC

クレジットカード、代引き決済、コンビニ決済

高齢層の利用も多く、「商品確認後の支払い」を重視する傾向があります。
地方顧客も多いため、現金系決済の需要があります。

デジタルコンテンツ系

クレジットカード、キャリア決済、PayPay

若年層の利用が多く、少額決済が中心のため、キャリア決済の利用率が物販ECより高くなります。

決済方法導入・維持コストと実践的戦略

決済方法の選択において、コスト面の正しい理解は極めて重要です。
単純な手数料比較だけでなく、導入・維持にかかる総合的なコストと期待効果のバランスを適切に評価する必要があります。

導入優先度の基本的な考え方

実際の導入判断では、金額や運用期間よりも「必須性」「ターゲット適合性」「導入しやすさ」の3つの観点からの戦略的判断が重要となります。

必須レベル:クレジットカード決済

全ての事業者にとって最優先事項です。
利用率59.4%~76.7%の圧倒的シェアを持ち、これなしではEC事業は成り立ちません。
Square、Stripeなどの変動費型サービスなら初期コストを抑えて導入できます。

ターゲット層対応レベル

年代・業種に応じた戦略的選択

  • 若年層ターゲット:PayPay(利用率32.0%、10代女性では37.0%)
  • 幅広い年代対応:Amazon Pay(住所・決済情報の即座入力)
  • 楽天ユーザー取込:楽天ペイ(利用率13.3%)
  • ファッション・コスメ:後払い決済(「確認後支払い」ニーズ)

低コスト・低リスクレベル

導入しやすく維持負担の少ない選択肢

  • 銀行振込:手数料なし(入金確認の手間のみ)
  • 代引き決済:配送業者連携、確実回収
  • 後払い決済:業種特化で高効果期待

売上規模余裕時レベル

月額固定費を負担できる場合の拡張

  • コンビニ決済:現金派の取り込み(月額固定費要)
  • キャリア決済:デジタルコンテンツとの相性(手数料5-10%)
  • ネットバンキング決済:入金確認の手間削減、即時反映

段階的導入の実践的アプローチ

第1段階(開業~3ヶ月):クレジットカード決済の確実な導入と動作確認に集中

第2段階(3~6ヶ月):ターゲット層分析に基づくPayPay・Amazon Pay等の追加導入

第3段階(6~12ヶ月):売上安定後に後払い決済など業種特化型決済の検討

第4段階(12ヶ月~):売上規模に余裕が出た時点でコンビニ決済等の月額固定費型を検討

月額固定費 vs 変動費の戦略的判断

決済サービスのコスト構造は、大きく「月額固定費型」と「変動費型」に分かれます。
この選択は、事業の売上規模と成長ステージによって最適解が変わる重要な判断です。

コスト構造 適用場面 メリット 注意点
月額固定費型 月商50万円以上 売上増加時の実効料率低下 固定費負担、売上変動リスク
変動費型 スタートアップ期 売上に応じたコスト、リスク最小 売上増加時の料率負担増
混合型 安定成長期 バランス調整可能 複雑な料金体系

売上規模別の費用対効果判断

月商10万円未満:変動費型(Square、Stripe等)が適しており、固定費負担を避けることで事業の安定性を確保できます。

月商30-50万円:固定費型サービスの検討時期です。
月額6,000円程度の固定費を売上で吸収できるかが判断基準になります。

月商100万円以上:固定費型サービスの実効料率メリットが明確になり、長期的なコスト削減効果が期待できます。

導入コストと期待効果のバランス評価

「希望する決済手段がない場合に6割以上のユーザーが離脱する」という調査データがあります。
つまり、決済手段の不足は直接的な売上機会の損失につながるため、コストだけでなく「売上機会の確保」という観点での評価が重要です。

運用コスト含めた総合評価:決済手段が増えると管理すべき業務も増大します。
入金確認、顧客対応、会計処理など、運用コストも含めた総合的な判断が必要です。

導入時の注意点とトラブル対策

導入前に必ず確認すべき点

技術的適合性:使用しているECシステム(EC-CUBE等)との互換性を事前に確認してください。
決済プラグインの対応状況も重要な判断要素です。

審査条件:各決済サービスには審査基準があります。
事前に必要書類や審査期間を確認し、開業スケジュールに支障がないよう計画しましょう。

サポート体制:トラブル発生時のサポート対応時間や方法を確認し、営業時間との整合性を取っておくことが重要です。

よくあるトラブルと対策

決済エラーの発生:決済手段が増えるほどエラーのパターンも増加します。
各決済方法のエラー対応手順をマニュアル化し、スタッフ間で共有しておきましょう。

入金管理の複雑化:決済手段ごとに入金サイクルが異なるため、キャッシュフロー管理が複雑になります。
管理表を作成し、定期的な確認体制を整えてください。

顧客からの問い合わせ増加:決済方法が多様化すると、支払い方法に関する問い合わせも増えます。
FAQの充実と問い合わせ対応フローの整備を行いましょう。

ECサイト決済戦略の総括と今後の展望

ECサイトの決済方法選択は、単なるコスト比較を超えた戦略的判断が求められます。
利用率データに基づく客観的な分析と、自社の事業特性を踏まえた最適解の追求が成功の鍵となります。

決済方法選択の重要ポイント

データドリブンな意思決定の重要性

感覚や推測に頼らず、実際の利用率データと自社の顧客層分析に基づいて決済方法を選択することで、確実な効果が期待できます。
クレジットカード決済76.7%、電子マネー・ID決済38.5%という実態を踏まえ、優先順位を明確にした導入戦略が重要です。

今後の決済トレンドと対応方針

決済業界は技術革新と消費者行動の変化により、常に進化し続けています。
中長期的な視点での対応準備も重要な経営判断となります。

注目すべき今後のトレンド

BNPL(後払い決済)の更なる拡大:2024年度1.8兆円超の市場規模予測通り、後払い決済は今後も成長が見込まれます。
特にZ世代の購買行動に大きな影響を与える決済手段として注目です。

ID決済の多様化:PayPay、Amazon Pay、楽天ペイに加え、Apple Pay、Google Payなど、プラットフォーマー系決済の普及が予想されます。

シームレス決済の進展:ワンクリック決済や定期購入連携など、決済プロセスの簡素化が進むと考えられます。

継続的な最適化の重要性

決済方法の導入は一度設定して終わりではなく、継続的な分析と改善が必要です。
定期的な利用状況の確認と、市場トレンドを踏まえた戦略見直しを行いましょう。

  • 月次レビュー:各決済方法の利用率と売上貢献度を確認し、異常値や変化の兆候を把握します。
  • 四半期分析:費用対効果の詳細分析を行い、利用の少ない決済手段の継続可否を判断します。
  • 年次戦略見直し:市場動向と自社の成長段階を踏まえ、新たな決済手段導入や既存手段の見直しを検討します。
  • 最終的な判断基準

    決済方法選択で最も重要なのは、「自社の顧客が実際に使いたがっている決済手段を提供すること」です。
    希望する決済手段がない場合に6割以上のユーザーが離脱するという調査結果が示すように、顧客ニーズとの適合が売上に直結します。

    コストとのバランスは重要ですが、売上機会の損失コストも含めた総合的な判断を心がけてください。


    ECサイトの決済方法選択は、事業成長と顧客満足度向上に直結する重要な経営判断です。
    本記事でご紹介したデータとフレームワークを活用し、自社に最適な決済戦略を構築してください。
    適切な決済方法の選択と運用により、売上向上とコスト最適化の両立を実現していきましょう。

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